「どうしても固くて外れないネジがある」
「ネジをなめてしまったけどなんとか外したい」
「ネジのトラブルって未然に防ぐ方法はないの?」
と悩んでいませんか。
結論、なめたネジを外す方法はあります。
本記事ではネジのトラブルに悩んでいる人に向けて
- 潤滑浸透剤
- 貫通ドライバー
- 逆タップ
- ハンマー
- 輪ゴム
これらを駆使して残っているネジ山に合わせた工具の使い方をお伝えします。
それぞれの方法によって外しやすさが違うので、難易度が低い順番に解説していきます。
記事の後半では「やれることはすべてやった。でも外れない場合」の対応策にも触れていきますのでぜひ最後まで読んでくださいね。
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ドライバーの使い方のコツ「押し付ける」「垂直を維持」「正しい番手」
まずは正しいドライバーの回し方を解説します。
ただでさえ外れにくいネジを外そうとしているのですから、やり方が間違っていたら確実にネジ山をなめてしまいます。
今回はバイクに使われるのが多いプラスネジのみ解説します。
固いプラスネジを外すコツは下記の3つです。
- 強く押し付けて回す
- 垂直にドライバーを当てて回すときにも垂直を維持する
- 正しい番手のドライバーを使う
コツ1 強く押し付けて回す
プラスネジは斜めに掘れた凹みに十字の刻みがあります。
ドライバーを当て回そうとすると斜めの斜面を滑ってドライバーが押し戻されますね。
この力を「カムアウト」と呼びます。
プラスドライバーを使うときは回すよりも下に押し付ける意識が大切です。
押し付ける力70% 回す力30%
押し付ける力80% 回す力20%
知らなかった人は驚くかもしれませんが、これくらい押し付けながら回すイメージなのです。
押し付ける力が強いとネジとドライバーの接地面のグリップ感がわかります。
イメージはサスペンションをグっと沈ませながらコーナリングしているときにタイヤのグリップ感をより感じられるのに似ていますね。
工具の扱いはバイクの運転と同じくイメージが大切ですよ。
コツ2 垂直を維持したままで回す
ドライバーを回すときに柄の部分を垂直に維持したまま回すのは意外と難しいものです。
ドライバーの先端がふらふらと動いていたら、ネジ山にきれいにドライバーが乗らないのは想像できますよね。
完璧にできなくても構わないので、垂直に回すことを意識してください。
「下に押し付けながら」も忘れないでくださいね。
コツ3 正しい番手のまともなドライバーを使う
安物の工具を使っていませんか?
100均のものや、車載工具に入っていたものは精度がいまいちでうまくネジ山にヒットしません。
最低限ホームセンターで売っているものを用意しましょう。
できればアストロプロダクツ製よりまともなものを用意してください。
目安はプラスドライバーなら500円以上です。ベッセルのドライバーは安くて精度もそこそこでおすすめですよ。
プラスネジの大きさは3種類[バイクではほぼ2番]
プラスドライバーの頭の大きさは1〜3番まで3種類あります。
番手が合っていないといくら精度が高い工具を使っていても安定してネジを回せません。
バイクに使われているものはほとんどが2番のプラスネジです。
あなたが持っているドライバーを外したいネジ山に当ててみて、少しでもがたや遊びがあったら番手が違うかもしれませんよ。
[補足]ぴったりな工具がない場合でも外すだけなら対応可能
手元に正しいサイズの工具がない場合どうするか。
そんなときは「外したネジは再使用はできない」前提なら無理やり外してしまう方法もあります。
この記事の下の方に「どうしても外れなかったときの対処法」に無理やりネジを外す方法を解説しています。
固いネジの外し方「基本戦術」
ここからは実際に固いネジを外すときの具体的な方法をステップ形式で解説していきます。
- 潤滑浸透剤を吹き付ける
- 貫通ドライバーで叩く
- 少し時間をおいてからドライバーで回す
- 細かい注意点を補足
この流れで解説していきます。
これだけでたいていの固いネジは外せますが、外れなかった場合の解説も記事の後半でしていますのであきらめないでください。
ステップ1 潤滑浸透剤を吹き付ける
- ネジ山に届くように吹き付ける
- 浸透するのを1分くらい待つ
- ついついすぐに手を出したくなるのをぐっと我慢する
潤滑浸透剤ではクレ556が有名です。
安くて手に入りやすいのですが頑固なネジを外す能力としてはいまいちです。
よしのパパはワコーズのラスペネを使っています。
体感では固いネジを外す能力としてはクレ556とは2倍くらい違います。
値段は3倍くらい違うのでコスパとしてはちょっと高いと思うかもしれませんが、ネジをなめてしまったときの手間を考えれば高くないと筆者は考えています。
メンテナンスで失敗しない大事なコツは「初心者ほど良い工具やケミカルを使うこと」です。
あなたの車両が古かったり状態があまり良くないバイクなら、クレ556ではなくてラスペネをおすすめします。
ステップ2 貫通ドライバーで叩く
- ネジに衝撃を与えて固着をはがすのが目的
- ドライバーをこれから買う人は貫通タイプがおすすめ
- ネジ山を傷めないようにドライバーを垂直に当てたまま叩く
貫通ドライバーとは頭からお尻まで金属がつながっているドライバーのことです。
ドライバーのお尻をハンマーで叩くと先っぽまで衝撃が届くのです。
力は弱めから少しずつ強くしていってください。
ステップ3 少し時間をおいてからドライバーで回す
- 無理はしない(ネジ山をこれ以上痛めない)
- ドライバーは正しい回し方で
- 少しでも駄目そうならステップ1~2を試す
大事なのはダメそうなら一度やめることです。ネジを完全に舐めてしまう前にステップ1に戻りましょう。
[注意点]ネジ山を完全に壊さないように注意
■ ネジをなめない範囲で色々と試す
■ 力加減を文字で伝えるなら金属が「グニュ」ってゆがむような感じがしたら外すのを一度やめる
■ ダメそうなときはステップ1~3をもう一度試す
自分でやらないでプロに任せるのも一つの手段です。
あきらめる目安:ステップ1〜3を5回くらい試しても駄目だったとき
[補足]インパクトドライバーは必要なし
インパクトドライバーとはビットを頭につけてお尻をハンマーで叩くと選択した方向にビットが回りながら貫通ドライバーのように使えます。
叩いて衝撃を与えると同時に緩む方向にも回せる特殊な工具です。
よしのパパはインパクトドライバーも持っていますが、インパクトドライバーよりも貫通マイナスドライバーとハンマーの方が経験上うまくいきました。
基本戦術で外れなかったときの対策「応用編」
ネジ山をなめてしまったときは残ってしまったネジ山を使ってどうにか回すことを考えないといけません。
ここからはネジを再利用することは完全にあきらめて力技を駆使して外す方法を紹介します。
- 太めの輪ゴムを使う
- ボルスター付きドライバーを使う
- バイスプライヤーで回す
太めの輪ゴムで回す[汎用性が高くやりやすい]
こんな太めの輪ゴムを用意してください。
この輪ゴムを痛んだネジ山のネジ外し剤の代わりに使います。
▲このようにネジとドライバーの先端の間に輪ゴムが挟まるようにして回してください。
コツはネジ回しの基本「押し付けながら回すこと」と併用することです。
ボルスター付きドライバー&メガネレンチで回す[工具が必要]
▲ボルスター付きのドライバーとはドライバーの根本に六角が付いていてレンチで回せるようになっているものです。
▲このように使います。
このやり方は右手を「垂直に押し付けることに集中できる」のがメリット。
左手は「回すことに集中」できます。
先ほど紹介した輪ゴムを挟む方法と併用すればなお効果がアップします。
バイスプライヤーで挟んで回す[使えるのでこの機会に購入がおすすめ]
バイスプライヤーとはロック機構が付いたプライヤーのことです。
大きさにサイズがいくつかあり、ネジの大きさによって2種類くらいあると便利ですね。
これでネジの頭をつかんで無理やり回せば外れることがあります。
ちなみに皿ネジなどネジの頭がつかめないものには使えません。
ここからはネジ山が完全につぶれてしまった後に試す方法を解説します。
応用編でもダメだったときの対策「最終手段」
それでもダメな場合はバイク屋に持ち込むことを検討した方が良いです。
しかし「絶対に自分で何とかするんだ!できるようになりたいんだ!」という人のために、最後の手段を2つ紹介します。
- ネジ山を作って貫通ドライバーで叩く
- ネジの頭に穴をあけて逆タップ
上記の方法はネジを破壊して外すためかなりの力技になります。
少しやってみて壊しそうなら、完全にとどめを刺す前にバイク屋さんに駆け込むことをおすすめします。
ネジ山を作って貫通マイナスドライバーで叩く[初心者の限界点]
これは「ネジ山がなくなったら作れば良いじゃない!」という方法です。
- 貫通マイナスドライバーとハンマーを使ってプラスネジの頭にマイナスのネジ山を作る
- ノミとタガネの要領でハンマーでガンガン叩いてネジ山を作る
- ネジ山が作れたらマイナスドライバーで回すのではなくネジ山に斜めにマイナスドライバーを当ててハンマーで叩いて回す(下の画像のようにポンチで叩くのも可)▼
▲この画像のポンチを当てる位置と回す方向を参考にしてください。
ネジの頭を切り落として逆タップ[難易度高め]
これは自力でできる最終手段です。
まずは下記の画像がわかりやすいので参考にしてください▼
エキストラクターとは逆タップの事です。
上記の画像と同じ内容を文章でも説明します。
- ネジの頭ををサンダーか大きめのニッパーなどで切り落とす
- 残ったネジ本体にドリルで穴をあける
- ドリルの穴はまっすぐに穴をあけないといけないので一番大事な作業!
- 折れたネジの太さが8mmだとしたら4~5mmの穴をドリルで開ける
- 穴の深さはネジの長さによりますが5~10mm程度
- その穴に逆タップと呼ばれる逆にネジが切ってある工具を指して回すと折れたネジを逆に回せるので外せる
斜めにドリルで穴をあけてしまってネジの雌山を削ると、リコイルというネジ山を作り直す作業が必要です。リコイル作業はさらに難易度が高いので、穴をあける作業は特に慎重にやってください!
よしのパパは逆タップを3回やったことがあります。
とても気を使う作業ですが落ち着いてやればできるはずです。
バイク屋に駆け込む
逆タップはドリルを使うので初心者にはおすすめしません。
貫通マイナスドライバーで叩いても回せなければバイク屋さんに行くのをおすすめします。
しかしここでチャレンジしていくのがメンテナンス上手への壁なので、チャレンジしたい人はぜひ頑張ってください。
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コメントやDMいただければできるだけ質問などに答えますので、一緒に頑張りましょう!
固いネジを未然に防ぐ予防策
固いネジには固くなってしまった原因があります。
■ ネジ山が錆びた
■ 高熱にさらされて固着した(マフラーの取付ボルトなど)
デザインの関係で雨に当たりやすいネジもありますが、そのバイクの癖のようなものでうまく付き合うしかありません。
しかし安心してください。ネジの固着は予防する方法があり、その方法は下記の2つです。
- 焼き付き防止グリスを使う
- バイクにカバーをかける
ここからは、ネジを固着させないコツを解説します。
スレッドコンパウンドや各種グリス
ネジ山にグリスを塗れば錆をほぼ防げます。
グリスは水を防ぐのでさらに錆びにくくなります。
注意点1 ネジを締め付ける強さを変える必要がある
ネジ山にグリスを塗るとネジの抵抗が減るので、その分ネジを弱い力で締め付ける必要があります。
トルク調整をしないとメーカーが指定している締め付けトルクよりも強いトルクでネジを締めてしまいます。
目安はグリスを塗ったら指定トルクの80%くらいのトルクで締め付けると良いです。
注意点2 グリスによって得意分野が違う
高温に強いのがスレッドコンパウンドなど耐熱グリスで、熱にさらされる場所の固着防止には最適です。
高熱にさらされる場所以外はマルチパーパスグリスを使うのがおすすめです。
カバーをかける(地味だが重要)
雨に濡れるとネジ山にも水がしみ込んで錆びてしまいますので、カバーなどで雨露からバイクを守りましょう。
ちなみに、夜露や結露にもバイクカバーは効果的です。
雨が降っていなくても湿気でバイクは意外と濡れてしまい、バイク全体を錆びさせていきます。
バイクにカバーをかけるのは費用対効果が高い整備です。
バイクに乗るたびにカバーをかけたり外したりするのは面倒くさいものですが、バイクのことを思えばぜひやってあげてほしい作業です。
まとめ 外れないねじに対応できると整備に自信が付いて楽しくなる
今回の記事は
■ ネジがなめてしまったりどうしても外れなかったときの対処法
■ 固いネジは予防することができる。
このような内容でした。
最後にお役立ち情報をもうひとつお伝えします。
一度も開けていないネジは「外れないかも」と用心する
自分で一度外したことがあるネジはほぼ外れますが、一度も外していない場所はもしかしたら外れないかもと考えればトラブルを防げます。
油断しないで作業に挑み、少しでも緩まない雰囲気だったら作業を止める。そしておちついて基本戦術の外し方を試せばネジ山を痛める前に対応できますよ。
ネジをなめるのを防ぐ方法の一つとして参考にしてください。
ネジが回らないのはバイク整備で一番多いトラブルだといえますが、これに対応できれば一番多いトラブルが怖くなくなります。
ぜひ頑張って戦ってみてくださいね。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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